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2005年06月04日

[小説] パターン・レコグニション (ウィリアム・ギブスン)

時速250ノットでアヒルと正面衝突

近未来のハイテク幻想はそのままに、現代を舞台にしたこの作品。
心理的障害を抱える主人公がマッキンとかジャパニーズヲタクとかを使いながら
正体不明の映像作家とその作品群を追いかけていく物語<何
ギブスン先生の本はこれで5冊目なんだけれども、相変わらず読んでるとかえって来れなくなりそうなトリップ感。
つーか今それは単に行動してるだけなのかトリップはいってるだけなのかの区別がつかなくなりそうな危うさがナイスです。

でも今回は随分とわかりやすく、かつ無茶な技術が出てこないというある意味挑戦的な試みでした。
調べものはグーグル検索
ぐぐるさんは何でも出てくる魔法の百科事典ですから。


電脳空間に没入したりもしないし空飛ぶエア・カーでドッグファイトしたりもしない。
超自然的ハカーが超能力でドア・ノックしたりもしない。


それでもサイバーパンク
この成分はむしろ濃ゆくなってる気がしました。
フッテージという映像の作者を追いかけ始めたあたりから俄然面白くなり、
派手な演出とかは全く無いのだけれども順調に目が離せない。
正体不明な作者の謎を解く楽しみ、というより追いかける愉しみがとても強いです。
推測と手がかりとぐぐる検索ジャパニーズヲタクを使って追いかける。
手のひらで踊らされているのではなく、自分で謎に向かって迫っている感触
そういう観点からは、もしかしたらミステリなのかも。


つかグーグル検索最強すぎ
住所氏名相手の顔写真までもが

「調べた。グーグル検索で」

ってオィィィィィイッ!


いや、ぐぐる検索はカモフラージュなのかもしれないですけど。
主人公、そんな露出するような職じゃないと思うし……

それからジャパニーズヲタクがいいように使われててどうしよう
アメリカ留学中のロリ顔ひんぬー女学生(というお話)ぞっこんLOVEのヲタが一人、
その写真につられてがんがんリークします。

すばらしいです


さらにこのとき、仕掛けてる方が妙に冷静かつ自信に満ちあふれているのも笑いを誘います。
「これこそタキが半生かけて探し求めてきた少女であり
この画像をひと目見た瞬間にそれを悟るはずだ」とかね
もう何をしていますか、何を。

フォトショップつかいまくったくせに

ていうか、「純粋なアニメの魔法」とか
「たとえ自然が生み出さなかったにせよ」とか,

いったいどこまで加工しやがりましたか!
だからこその自信。これがFFFクオリティ


なんてレベルで理解してるんだギブスンせんせいは

彼は重要な情報をもたらしてくれるキーマンではあるのですが、その役割は完全に道化 でしょうか。
でも馬鹿にされているというわけでなくて、最後には素敵な物語が待っています。
彼にとって幸せかどうかはわかりませんが
むしろ泣きそうな


しかしトウキョウの描写といいこのキーマンといいチバ・シティといい、
ほんとギブスン先生はジャパニーズ・カルチャーがお好きなようです。最高です。
アキバ界隈を舞台にして非常に限定的な物語も読んでみたいですね<何

追いかける楽しさ、というものを少しでも知っている人で、
あの独特の文体が許容範囲であれば、是非お進めしたい一冊です。

投稿者 kagerou : 2005年06月04日 04:00

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