Script Life 千夜一夜

それがやってきたとき、午前０時をすっかり回っていた。
チャットで文字を入力していると突然反応が鈍くなり、
文字変換も効かない。

どころかノートPCの下部からこいつぜったいヤバイって！　って叫びたくなるような怪音が響いてきた。
つーかうわ、ウィンドウの切り替えが効かない……？

そうこうしているうちに画面は蒼く蒼く染まり、同時に表示される白ぼったい文字。

「KERNEL_STACK_INPAGE_ERROR」

しげしげと自分の手元を見ながら
なんじゃ　こりゃぁぁぁぁっっっ！！

＿｜￣｜○

仕方がないので、ダンプし終わってから再起動……？　
異音はまだ続いている。BIOS認証通過。始まらない起動画面。
Win98時代に見慣れた、起動前のDOSプロンプトに似たようなものが点滅するばかり。

Win98時代に見慣れた、OSが逝かれてしまったときの症状

も　う　だ　め　ぽ

＿｜￣｜○

その後、ノートPCは買い換え前の（もう一年以上前になる）HDDで起動を確認し、
とりあえず本体はHDDを変えれば動くんじゃなかろうかという状態であると定義する。ていうか信じてる＜何

さて……問題はこちらの、イカレタHDDである。
ちょうと、2.5インチのHDDを取り付けるためのUSB外付けケースがあったため、
それを利用して接続をしてみようか。

その片手に収まるほどのケースに入れてマシンにつないでみると、
例のけたたましい異音を立ててアクセスランプが点灯する。
認識は……外付けHDDドライブ、までであり、ディスクはマイコンピュータに現れない。

そして繋ぎ続けている間、鳴り続ける耳障りな音。
たまらずケーブルを引き抜くとそれは、少し名残惜しそうなうなりを響かせたあとに沈黙する。

何度かそんなことを繰り返しているウチに、あることに気がついた。

……ひっくりかえすと、認識しやすい？

ふと、手の中で唸っているケースを傾けたときに気がついた。
音の鳴り方が微妙に違うのだ。

……試しに、おそるおそる、少しづつひっくり返してみると――来た！

マイコンピュータにドライブが表示されましたよ！

今思えば、それが最初で最後の奇跡だった。
しかも、とりあえず認識しましたという感じで、中を開いてみると異音はいっそう酷くなる。

だが、ここでまた少し、傾き具合を急にしてみる。するとその動作にあわせるように、中のファイル一覧が表示されてきたのだ！

私は歓喜した。データは吸えるぜﾋｬｯﾎｳ！

そしてとりあえず消えては困るものから順にメインPCに移していった。
何しろこいつはもう半死半生、いつ停まってもおかしくない。
時間は掛かりはするが、コピーそのものは順調だった。
時折停まったとしても、手元のHDDを少し傾けてやるとまた動き出す。

私は油断した。時間は掛かってもデータは救い出せる。
吸えるだけデータを吸ってから、chkdskでバッドセクタを排し残りを吸おう。
そんなことを考えていたときだった。
　
　
　
　
　
　
　
　

――――――ギャリッ！
　
　
　
　
Σ（ﾟ∀ﾟ　）　びくぅっ！
　
　
　
　
握りしめていたアルミケースは
一瞬、明らかに違う音を響かせ
大きく震えた後、その動きを止めた。

そしてまた回り出す。伝わってくる回転の感触。
じっと手を見つめて、一瞬だけ天井を仰ぎ、何事もなかったかのように作業を再開する。
　
　
　
　
　
　
　
　

――――――ギャリッ！
　
　
　
　
ΣΣ（ﾟ∀ﾟ　）　びびくぅっ！
　
　
　
　

またしても響く、ナニかをひっかいてシマッタかのような音

やばいこの停まり方は絶対ヤバい
そしてそれ以降、PCにそのHDDを接続しても、
何かUSBに刺さってるという認識はしているようなのだが、
それ以上は進むことはできなかった……

＿｜￣｜○